仮面ライダー響鬼 第16話『轟く鬼』

「音撃斬・雷電激震!ハァッ!」

轟鬼・襲名!
にふさわしい見事な音撃シーンに日本中のお茶の間が震えたのではないでしょうか。
攻撃の効果音そのものがスラッシーな戦闘BGMになっているわけですから燃えることこの上無い。
ギターソロには色々な奏法があるし、和太鼓やトランペット以上にソロプレイがアツい楽器なので今後も演出の可能性が秘められていて期待大ですね。


ザンキさんは今後もサポート役として出てきて欲しいです。
ぶっきらぼうな口調でちょっと怖いお兄さんの雰囲気だけど、決して人に対して攻撃するような発言はしない。
戸田山の、初陣ゆえやむを得ぬ失敗に対しても、ただ淡々と「ああそうだな…ミスしたな」と言うだけ。
たとえば「どんなに言い訳したい理由があっても死んだらそれで終わりだ」なんてダメ出しや、
逆に「厳しい戦いだがお前なら出来るはずだ。そう信じて次こそ頑張ればいい」みたいな励ましの言葉…
そんな、言われなくても戸田山自身が一番分かっている言葉を投げかけることは決してしないのが素敵だと思います。
そんなザンキのもとで数年間共に戦ってきた戸田山は、当初は後継ぎのプレッシャーに狼狽したものの、やがて誰に言われるでもなく自分自身で立ち向わねばならない戦いへの独り立ちをしていきます。
「結局オレはお前と一緒にやってきたのが楽しかったのかも知れんな」
なんてやり取りに至るまで、先週に初バトルを見せたばかりなのに本当に何年もやってきたかのような名コンビの別れが名残り惜しまれ、ホロリときました。
戸田山くんは早く「顔だけ変身」おぼえよう、な。


そんなドラマの一方でヒビキと明日夢のドラマの方もたっぷりな内容で、今週は密度高すぎ!
ザンキの引退とその後を頼もしく(?)引き継いだ戸田山の件を聞いて、ヒビキの中ではある考えが益々つのってきたようです。
明日夢宅へ「見舞い」と称して何か言いたげに立ち寄る様子も、「たちばな」へ帰ってきてからの「ただいまー!ただいまー?」なんて駆け回る様子も、普段と服装が違うせいもありますがどこか落ち着かず、考え事に浮かされて上滑っているような調子。
そんな空気を何となくニオわせる演出、そして細川氏の演技は本当に細かくて凄いと思います。
こういう、言葉に表せないようなところで感じることの出来る機微の部分を、子供の視聴者たちも意味は全然分かんなくても何となく感じていたりしたら面白いなぁ。


ヒビキだって今後自分が負けたり傷を負うなんてことを考えるつもりは無いが、それでもザンキと同じようにいつか必ず自分にも限界の時がやってくる。
その時に、自分に代わって戦い、護り続けてくれる者を用意しておくこと…その者に自分でなければ伝えることの出来ないものを伝え残しておくこと。
「弟子なんてガラじゃない」などと謙遜をしている場合でなく、それは鬼として必ず為しておくべき責任です。


特に魔化魍たちの攻勢がより強く狡猾になってきている最近。
だからこそ後継ぎを作っておく必要がいよいよ現実的に感じられるし、しかし、だからこそ、危険さを増す戦いの世界に他人を不用意に引き込んではいけないという気持ちも強くある。
板ばさみする2つの気持ちは戦いが激しくなればなるほど両方同時に大きくなる一方です。


今回、明日夢の方から「僕を弟子にしようと考えてます?」と切り出してきたのは意外でした。
しかし考えてみれば、ヒビキの方からその件を切り出すのは、弟子に取る気があるにせよ無いにせよ難しかったでしょう。
ヒビキ側からこの話題を出せば、どんな言い方をしたって明日夢のことを弟子の候補として見ている」というふうに受け取られてしまう。
それはある種の断りづらい強制力や、断った場合に今後も友人としてつきあっていく上でのぎこちなさを生んでしまうでしょうから。
ヒビキが今回見舞いに訪ねたのは、明日夢のヒビキに対する気持ち…それも、なるべく変な強制力とかを与えることなしに正直なところどっちのつもりで今までいたか、そして今後いるつもりかを聞き出したかったのだと思われます。


かつてヒビキが自分の意志で鬼になることを決めたように、自分で覚悟を決めて弟子の名乗りをあげる者がいるのならば喜んで迎え入れたい。
とはいえ、自分からはこの話を言い出さずに相手から言い出す形になるまで待つ…そんな卑怯な関係にはしたくない。
そういう話は無しで友人として付き合える相手とは、本当にそういう話は無しにして今後も付き合っていきたい。
凄く微妙な気持ちですよね。最後のカットで何かを決心したかのように天井を仰いだヒビキさんの胸中にはいったい何があるのでしょうか。
そして、弟子の話を断った一方でブラバン部に入ってドラムを叩くことを再開する明日夢クンの胸中もまた。


この弟子入り話は、明日夢自身にとって何か大きな覚悟を決めるような事件*1が無い限り、そうして彼が自ら鬼を目指すことを志願しない限りは進展することは無いと予想します。
いずれにせよ、ヒビキの後に彼のするべき仕事を継げる者として、現在のところ彼の周囲にいる候補者が明日夢以外に無いこともまた事実なのです。


そんな彼らの気持ちを踏まえて明日夢宅での母を絡めた三人模様の場面を思い出すと、おっかしくてたまらないですねぇ。
お母さんにとってみれば、ヒビキはひょんなことから知り合って家にも来てくれるようになって、息子も凄くなついているしひょっとしたら…な可能性を秘めた年下の男の人って感じなのでしょう。だって何も裏の事情知らないんだもんな。
ヒビキたちの弟子についての話題も絡んで、そんな三者三様に言い出すに言い出せない胸中を秘めながら、とりあえず世間話で談笑しているいたたまれない空気。
面白すぎです。

*1:起こるとしたら相当哀しい出来事になる可能性が高いですがね。