ドラえもん

  • 『タイムふろしき』

原作の名場面、玉子さんの「ここを約60度の角度で叩くのがコツよ」がいい感じでした。テレビの外装板を叩くときの効果音がやけにリアルでグッド。
ふろしきを追っかけながら町が大騒ぎになる場面、またそのあとのドラえもんミニシアターもそうですが、今回の新シリーズは道具をめぐるチョコマカとしたドタバタシーンが軽妙で面白いですね。
その一方で、

うーむこちらは…40点!
しんみり心にしみる系のこういう話の時には、話の流れをもっとじっくりとしたテンポでやらないといけませんね。
どくさいスイッチ』の時は30分前後編にすることでたっぷり時間を活用した演出になってしましたが、『タンポポ空を行く』もそうすべきだったと思います。


野球に連れ出されるのがイヤなのをきっかけにして家に閉じこもり、ファンタグラスで観る光景に没頭してどんどん内向的になっていくのび太の姿。ここまでを前編で切る。
後編では、同じように外の世界を怖がり、今のままの生活から踏み出すことを嫌がる綿毛の坊や。それを限り無く優しい目で見守りながら、外の世界の素晴らしさを語り聞かせて後押ししてくれるタンポポの母親…。
綿毛坊やの旅立ちを親身になって見守り、見送り終えたあとで自分も一歩踏み出してみる気になるのび太の姿で締め。
そんな前後編の割り方でもよかったと思います。

(野良猫たちののび太への悪口が)
「本当に言ってるわけじゃあないよ、
 のび太くんが心の奥底で思っていることが聞こえているんだ」

実はこのファンタグラスという道具が、自身の感じている心象風景を覗き込んで自分を見直す道具なのだと示している、このドラのセリフ。
原作で「文字で」読む時には読者がそこでページをめくる手を止めて読んだり、読み返したりできるのでその意味を読者の思い思いのテンポで噛み締めることが出来ますが、
アニメでは一言で終わってしまうのでその分をカバーするためには印象に残る言わせ方を演出しなければなりません。
それと同じように他の点を通じてみても、今回の『タンポポ空を行く』はただただテンポの速い進め方がアダになってしまった惜しいところが多い出来でした。


ラストの「ぼくも…仲間に入れてもらおうかな…」は、原作の同じコマの構図がオレは大好きだったのですが、今回アニメではそれとは違うアングルを使用しつつ、最後の止め絵の演出を使って中々いい味を出していました。
どくさいスイッチ』では細かいところまで心に染み入る構図やカット割りが出来ていたのですから、今回の話でも出来たはずなんです。
ただ30分なら出来ても、15分枠の中に詰め込むには、まだシリーズ開始間も無い今の段階では熟練度が足りなかったのかもしれませんね。
もっとシリーズを長年重ねてこなれてきて、絶妙の演出リズムみたいなのが出来てきた時期にこの『タンポポ空を行く』はやって欲しかったですねぇ。


さて次回はスネ夫の「カ、ビ、ン。」で有名なあのお話ですねっ。