ウルトラマンマックス

注意:初めは思いっきり否定してますが徐々にベタ誉めになってきます。

というわけで始まった新シリーズウルトラマン。ネクサスは途中から完全に無視して観なくなっていましたがさて今度はどうなるやら。



第一回放送を観た時の感想は、「やべぇ〜」でした。

「生物のある種が増え続けると、天敵が現れて数を減らそうとするのが自然の摂理だ。人類が増えすぎたから怪獣が現れたんだ!」

なんだこの脚本は。
防衛隊の偉い人が喋っているセリフなのでこれは科学的な説明をしているシーンのつもりなのでしょうが、言ってる内容の中に教養がまるで皆無というか貧困というか…怪獣映画でよく、破滅的な思想を持った宗教団体がデモ行進して同じようなセリフを言ってる場面とかは見たことありますけどね。その手のセリフですよこれは。

「灼熱の高温怪獣が現れたから、対極で氷の低温怪獣が出現した。これは自然の摂理なの」
「…と、いうことは、さっき倒した高温怪獣の方も…」
(バラバラになって爆死していた高温怪獣、みるみる再生して復活)

なにがどう自然の摂理なのか、そしてなにが「と、いうことは」で怪獣が生命の摂理に逆らって肉体修復し生き返る理屈なのかがさっぱり分からん!言ってる隊長たちが凄くアホな大人に見えます。


幾らなんでもこんな貧困で科学的説得力の無いSF発想力では萎える。
「空想特撮」なんだからウソなのは分かるし、SFのアイディアも今日び使い古されてるから、視聴者の予想の裏をかいて驚かせるような作品はそりゃ難しいですよ。
とは言え、せめてありがちなネタで作るとしても「お?この展開はひょっとして○○みたいなネタを使った展開になるのかな?だとしたら面白いねぇ」くらいの興味を持たせる作り方はして欲しいです。


ティガ以降のウルトラシリーズで幾度となく繰り返してきた設定を持ってきただけの、これは過去シリーズ再放送なのかと見紛うばかりな有り合わせ内容…
水上にそびえる防衛隊基地、分裂合体フォーメーションで陣形をとる戦闘機、初めは防衛隊に所属しない立場から活躍する主人公、そんな彼を「民間人は無茶しないで私たちに任せなさい!」と怒り冷たい第一印象を残すヒロイン、超IQを持った天才児だがちょっと浮世離れした変人といった感じの若者ナビゲーター、
…どれもこれもどこかで見たものの焼き直しばかりで、新しいものを作り出そうという気概が見えてこない。
だったらなんでウルトラの新作を作ろうなんて思ったのさ!
「仕事で作れって言われたんでとりあえずティガとかのビデオ観てこんな感じかな〜みたいなのを作ってみたんだけど、これで合ってる?」
みたいな、そんな感じでやってるだけなの?だったらやめちまえ!


…とまで思ったのです。
以前の日記でも長々と言ったことがあると思うのですが、円谷空想特撮というのは30分の中に展開される超科学と自然の神秘が支配する世界であり、そのアンバランスゾーンの魅力でどこまで視聴者の目と耳を惹きつけるかが勝負です。
それには今の仮面ライダーのような連続もののストーリードラマではなく、単話形式でどれだけバリエーション豊かな怪奇シチュエーションの数々を毎週織り成すことが出来るかだと思います。
ウルトラQ」や「怪奇大作戦」のように怪奇な事件の面白さがある内容ならば極端な話、人物劇だけでも子供を物語に引き込むことは出来る。
まぁ無理してウルトラシリーズから怪獣を排して作るようなことは絶対にしなくていいしする意味も無いですが、最近のウルトラシリーズ数作品の失敗はそうしたアンバランスゾーンへのSF心のセンス無しにウルトラを作ろうとしていたところにあると思うのでして。
よく分かってもいないまま平成ライダーや最近のアニメを真似たノリで人間ドラマを描こうとし、結果的に的外れなものを作ってしまっていたからダメだったのだと思います。

結局のところウルトラ怪獣の商品を売るキャラクタービジネスの一環として放送したいだけなのに、大人びたドラマの体裁を整えようとして無理矢理に作りたくも無い人間の出る物語を付け加え、そのせいで「怪獣の出る5分間+つまらないウダウダ話の25分間」という作品になってしまう…のだとしたら、いっそ「アンドロメロス」や内山まもる先生・居村慎ニ先生らの漫画版のようにウルトラ一族だけが出てくる人間不在のSFヒーロードラマを作る方がよほど魅力的で前向きなアイディアではないだろうか?


とまぁ色々なことを考えてため息をついた第1回だったのですが、
しかし!今回の「ウルトラマンマックス」は原点回帰・単話形式を売りにし、様々な映像クリエイターが一本一本の作品を手がけて作りあう…という、言葉面だけを受け取ればまさに長年願っていたとおりの路線らしい。
きっとあの第一話ではとりあえず基本設定のお披露目ということでああいう内容だったのでしょう、ありきたりのように見える舞台設定だって、今後様々な個性の作家が奔放にストーリーを創作できるよう汎用性の高いフォーマットを考慮した結果なのかもしれない。

だから2話目以降でのセンスが弾けることに期待しようではないか!
そう好意的に受け取りつつ
2話目「怪獣を飼う女」
を観賞しました。


…面白かったです。
水槽の中で飼われる小さな怪獣エレキング、それを一人眺めて笑みを浮かべる女。
このワンカットの中に集約されている不思議空間のビジュアルインパクト、これこそが円谷特撮の魅力・アンバランスゾーンですよ!
過去の名造形が再現され(爪とかのいらんアレンジも加わってるけど)、夜景に映える黒ずんでヌメりのある濡れ肌具合のエレキング…その美しさもあいまって、あの部屋の中でのワンカットは「一度見たらなんか忘れらんない」シーンになっていたのではないでしょうか。
「あの女性がどうも怪しい…」と疑いながら近づく隊員たち。
「訪ねてみたが、異常な様子は無いようだ…しかし気になる」「おや?かつて可愛がっていた犬に見向きもしないなんて?変だぞ」
こうして徐々にミステリーの核心に近づいて行く流れも何だか円谷チックで、真相が先にバレているとかいないとか関係無しにワクワクしてしまいます。
だって「怪獣を飼う女」ってタイトルの時点で、観る前からネタバレはしてんだもんな(笑)。つまり面白いとか面白くないとかってのはそんなもんに左右されるものじゃあ無いんだよ。


こういう幽玄とした怪奇のセンスを大切にした作品が、今後も数話に一回のペースで当たりクジとして入っているのならば、喜んで毎週エアーチェックする気になってきました。がんばれマックス。

今回のエピソードは「女性は何も知らないまま怪獣に操られてただけだったんだ、もう大丈夫だねよかったよかった!」というスンナリしたオチでしたが、個人的に望んでいた展開としては、あの女性は自分の意志でエレキングを飼う生活に没入していて、んでもっとこう人間の心が抱える闇みたいなのが垣間見えるような怪奇事件ものになってくれることを期待していました。
まぁそれは個人的に「怪奇大作戦」的な作品の復活を求めすぎているのかな〜。今回の筋書きでも充分面白かったと思います。
それに今週のエピソードには並行してあのアンドロイド少女の設定をお披露目するサイドストーリーに物語の尺を割く必要もありましたからね。
1話目では単なるありがちな引きこもり天才児ナビかと思ってたら、「アンドロイド少女」という特撮の伝統ロマン溢れる設定でびっくり。面白そうじゃあないですか。