惑星大怪獣ネガドン

http://www.h2.dion.ne.jp/~magara/project.html
テアトル池袋にてレイトショー公開中の、全編CGによる特撮怪獣映画!
と話題の作品を観に行ってきた。
公式サイトでも映像のさわりを観ることが出来るが、CGに実写特撮と見紛うばかりの質感・距離感・量感
スネ吉兄さん言うところの「三感」!)
を持たせているのが素晴らしい!
戦車や戦闘機などは昭和特撮で観たあの匠のフィルム映像感覚を久々に味わうことが出来ますよ。
ネガドンもどう見ても実写で吊り模型モデルを使って撮ってるんじゃないかというくらいの実在感(作り物っぽく見えるという意味ではないですよ、むしろ巨大感やリアリティに関しては申し分ない迫力です)。
そしてそれに対抗する巨大ロボット・ミロクの重厚さといったら!発進した直後、大空を飛翔するシーンが東宝特撮超兵器っぽくて個人的に感動モノでした。
構図やカット割りが上手なのもあるんだろうなぁ。特撮好きにはたまらない映像センスです。

こういう自主制作規模の特撮作品の場合、やむをえず拙い特撮映像になってしまうところをひとつのチープな味わいとして売りにすることも出来るだろうに、この映画の映像の迫真ぶりは洋・邦のメジャー映画のそれと比較して上だ下だと論じるに足るぐらいのレベルを全編にわたってキープしているから凄いなと思う。


映像表現に関してはほとんど一人の手で作られているこの作品でこれほどまでの質感と重厚さの映画が可能なのを観ると、その一方で世間ではポリプロピレン製かと疑わんばかりのチャチい鉄人をヘコヘコ歩かせて「これが昭和テイスト」なんて言ってるような映像が莫大な予算をかけて全国ロードショー映画としてまかり通っていると思うと、ほんと何なんだろうって思いますね。
「CGを使うと映像が薄っぺらになるから、あえて実写特撮の手段で撮った方が味わいのある映像になる」
というのが定説ですが、今回このネガドンを観てちょっと考えを改める必要を感じたな。
いまやCG技術は充分実写同様の観賞に足る水準に達している。
あとは実写を使うにしろCGを使うにしろ、結局はどんな映像を作りたいという「志」があるかどうかなのだろう。


とまぁ映像的には素晴らしかったし、作品全体に流れるトクサツ愛とジュブナイル魂が
「ああ、これ作った人ほんとに根っから好きなんだなぁ」
と心地よかったけれど、映画としては物足りないところがあったといえばあった。
実写無し全編フルCGにこだわった結果、人物をCGで描いて動かすのは非常に難しいために出番が少なくなる。肌の質感とかは凄かったですけれど、さすがに動きのあるシーンを入れるとウソ臭い映像になってしまうのを嫌ったのか、ほとんどが立ったまま・座ったままといった構図で会話するシーンばかりになっています。
人物を動かすシーン無しにドラマを持たせようとすると、今回の30分という尺が実際のところ限界だと思った。いや30分でも無理はあったな。
これ以上のボリュームあるドラマを作ろうとするならば人物シーンまでCGにこだわらず実写で撮った方が、映画の出来を追求する為には賢明な選択でしょう。
ネガドンによる都市破壊シーンも、やはりトクサツ好きならば街中で逃げ惑い命を落とす人々の様子なども描いて破壊の悲惨さを表現したかったはず。
でも今回の作品ではあくまでも「実写を一切使わずにこの内容が撮れる!」とアピールするプロモーション的な要素もあって、敢えて人物までCGで撮ったのでしょうね。
このプロモーションを足掛けにして、将来この製作者が特技担当するメジャー特撮作品が生まれるようなことになれば本当に面白いと思いますよ。
映画として物語に没入することまでは出来なかったけれど、そんなふうに楽しんで観られた1本でした。DVD買おうかな。